研究にまつわる本紹介📚

このページでは研究に関連した本を紹介していきます。

釜ヶ崎から 貧困と野宿の日本

生田武志 ちくま文庫 (2016)

あらすじ

2008年6月釜ヶ崎で刑事による暴行への抗議活動が行われ暴動が発生した。機動隊は数百人出動し、労働者側は空き瓶や自転車、石など投げる激しい衝突が繰り広げられた。暴動には女子高生や少年まで参加しており、計24人以上が逮捕された。また暴動で助骨を折ったり、機動隊に顔面を殴られ血まみれになったり多数の怪我人が出た。

しかしこの暴動についてマスコミによる報道はほとんどなかった。そのためこの「21世紀に日本で初めて起きた暴動」をほとんど知る人はいない。
「釜ヶ崎から」では、長年釜ヶ崎と携わってきた筆者がメディアからでは伝わらない釜ヶ崎の実態や歴史について書いており、日本の構造的な歪みが生み出した社会的弱者に寄り添い、彼らが直面している現実を報告している。

大阪市西成区にある日雇労働者の町、四大寄せ場「釜ヶ崎」。日雇労働者が仕事を求めて集まる寄せ場であり、簡易宿泊所が密集するドヤ街でもある。新今宮駅は交通の便が良く、「釜ヶ崎再開発」を行い、大阪の新しい顔にするという思惑を抱く企業や政治家は少なくないだろう。実際に簡易宿泊所群は外国人や観光客向けの国際ゲストハウスに転換してきた。松井知事(現市長)は「あいりんの問題は大阪全体の問題だ」としている。

西成特区構想や、起こり得るジェントリフィケーションを私たちはどのように考えるべきであろうか。釜ヶ崎は日本社会が抱える労働・差別・貧困・医療・福祉の矛盾が集中し、人口減少・少子高齢化の問題を抱える「日本の縮図」である。その一方で、困窮した人々を支える社会資源が最も集中する街になった。釜ヶ崎はそのような人々に対する関西の「最後のセイフティネット」として存在しているのである。そんな街が、どこにでもあるような街に変わることは、意味のあることなのか。いや、むしろ、生活困窮など様々な「生きづらさ」を抱える人々が助け合いながら、生活できる街として存在し続けることのほうが、社会的な意義があるのだ。釜ヶ崎の活性化は労働者や野宿者の排除ではなく、集まる人々や近隣住民の相互理解と交流が大阪を変え、日本を変えるのである。

ほとんどの野宿者が日雇労働者であった1980年代から90年代前半、様々な失業者が野宿に至るようになった90年代後半、そしてDVや家庭問題あるいは失業によって女性や若者、家族連れが野宿をするようになった。またその実態を把握することは難しい。なぜなら、野宿者はそれぞれの理由より、社会から身を隠そうとする。また、野宿の現場が公園や路上だけでなく、ネットカフェやファストフード店などにシフトしつつある。現場の姿が大きく変化していく中で、私たちは視野と知識を広げていかなくてはならない。

現在、ホームレスの数が減少しつつある。それが一概に良い方向に進んでいるとは言えないと感じた。働くということを望んでいる人たちに対して生活保護を受けさせるだけであったり、テントを壊して公園から追い出したりすることは本質的な解決には繋がっていないからだ。野宿者の方たちに対する襲撃は圧倒的に若者が多いと本書では語られていたが、ホームレスに対する偏見や親世代からの偏見的な教育が関係すると考えられる。ホームレスという存在を隠すより、第一歩として関わり・知るということがお互いに必要だ。世の中にはホームレスを搾取やビジネスに利用しようとする悪い人だけではないことなど。そういう些細なことを知ることがホームレスの方が行政に頼ろうかなと考える契機になり得るかもしれないし、路上での生活をあえて継続する人々の考えにも触れられるだろう。

私はいつ野宿になってもおかしくない、そう感じながら読んだ。シェルターも実際、毛布は洗濯もされておらず虫がたくさん住んでいて、環境はひどいものだと聞いたことがある。残酷な現実に胸が痛んだ。しかし、作者が社会的弱者に対して心から寄り添える方であるからこそ本書は少し偏りのある内容であるように見えた。国や行政の考え方が排除ではなく、共生に向けばと感じる。私自身も偏りなく社会を見られるようにならないといけない。


社会的排除 参加の欠如・不確かな帰属

池田正美 有斐閣 (2008)

 

あらすじ

 

社会的排除という言葉はフランスで生まれたとされている。フランスでは戦後復興と福祉国家の諸制度が達成されながらも、そこから排除されている人々の存在を「豊かな社会の新しい貧困」とし指摘する声が1970年代からあった。フランスは「連帯」思想を基礎としているため、排除された人々の社会的なコミュニケーションやネットワークの回復に社会側が責任を持つことが強調されている。後に同様の問題を意識しヨーロッパ諸国では「社会的排除」について問題意識が強くなった。そして、アムステルダム条約やリスボン欧州理事会などでも話し合われた。

 

ホームレスに至る経緯は3つのパターンがあると本書にはあった。①最長職は安定しており、路上生活をするまで住宅に住んでいた人々が急に複数の排除を受け路上へ出現。②最長職は安定しており、最長職の時から、または路上直前に労働住宅に移動し路上へ出てきた人々。③最長職時から不安定職にある人々。全体的なホームレスの特徴では学歴が低い傾向がみられ、また高等教育への不参加、未婚であり家族がいない、男性が中高齢期においての失業など見られる。①のパターンでの、路上生活となった人々はもともとは中小零細企業の雇用者であったり、自営業であり学歴も比較的高く、家庭を持ち普通住宅でも暮らしてきた人々である。だが突然に複数の社会的排除が重なった結果ホームレスとなった。例えば、失業や倒産などの労働からの排除、また離婚や別居の家族関係の崩壊などがある。①に対して③は大きく異なる。参加から排除が長期的に継続している。これらの人々の多くは義務教育までの学歴は形式的なことで、不登校であったり、未婚のまま会社の寮などを生活の拠点にしていたことが大きい。そのような意味から排除というより、最初から社会への参加が充分でなかったことかもしれない。②のグループは①と③の間のようなものである。ある人は社会参加できていた人などもいる。でもこのタイプの人々は社会において自分の定点を独立して形成するのでなく職場に付随し労働型住宅という形でしか形成できていない。社会的排除という言葉は社会からの排除であるが、排除の主体というのは様々である。職業からの排除や、人間関係からの排除、もともとお金などの資源がないというものがある。

 

その他にも、ネットカフェに住む若者、セーフティネットについての記述があった。


ホームレス大博覧会

村田らむ 鹿砦社(2013)

ホームレスの街西成をはじめ、日本中のホームレスを、14年かけて取材し漫画形式で描かれている。

この本では、ホームレスの実態をキャラクター化して描いており、日常を垣間見ることができる。ホームレスというと、可哀そうであったり、同情の余地が生まれるが、基本的に茶化した内容であり、時に不謹慎かもと感じる一面もあったが、ホームレスの暮らしについてより細かく知りたければ、この本を手に取ってみるのもよいかもしれない。


現代の貧困

著者:岩田正美 出版社:ちくま新書

【要約】

第一章

1章では海外・日本におけるワーキングプワーから見る貧困の歴史を述べている。

ここでは、貧困の“再発見”が重要だと岩田氏は述べている。それを象徴しているのは日本のホームレスや貧しい人々である。欧米では地下鉄の道で寄付を募ったりと、むしろ自分の貧困を社会の産物として社会に訴えているが、日本ではそのような人は一切声を上げずむしろそのような状況に恥じている。日本には新しい貧困に語る環境や「目」や「声」がないと筆者は述べている。

第二章

 第2章では、貧困の判断基準についてである。ここでは様々な境界設定が挙げられている。

1つ目は貧民窟・スラムという空間的な境界によって把握する。2つめは生存のための最低生活費を下回る収入や生活費の状態であることを貧困としてはんだんする方法である。

第三章

3章では日本の貧困の現状について様々の視点からのデータに基づいて述べている。

 筆者は、固定してずっと貧困状態にある層が極めて重要ではないかと述べ、そのために、作られた分析方法がダイナミック分析だ。それよって1994年から2002年の9年間にかけて35%が貧困経験者というデータが出た。つぎに、筆者貧困と絡む問題について述べている。職業との関係では、本人が常用雇用者の場合は安定層が多く、一時貧困層は少ない。また、学歴の関係を見ると中卒レベルで貧困経験層が多高卒は一時貧困が多くなるが、貧困経験全体で41.2%となる。大卒は8割以上が安定層である。配偶関係では、配偶者のいる女性に比べて、いない女性の方が固定貧困は多くなっている。やはりシングルマザーの貧困経験者が際立っていることが分かった。

 

第四章

4章ではホームレスについてである。筆者は今までに述べてきた調査や統計から落ちてしまう人々の代表がホームレスだという。目に見えるため把握はしやすいが、実態を知ることは大変極めて難しい。

 日本ではホームレス調査をというと、「路上で起居している」ことが判断として使われるが、これに問題があると筆者は述べた。なぜなら「仕事場の寮などで住居が一時的にあり、路上とそこを行き来する中で路上生活が主となっていく人と住宅を失ったひとという風に分かれているからである。そのホームレスだが、日本では路上ホームレスの5割近くが50歳代に集中していて、60歳代で3割前後となっている。年齢だけでなく、路上ホームレスは6割近くが義務教育までの学歴で未婚率も多いことが分かった。

さらに、岩田氏はホームレスは、3つに分類されると述べた。1つ目は安定した常用職からホームレスになったタイプ(安定型)。2つ目は少なくとも直前には職場の提供する労働宿舎(寮や住み込み)に単身で住むようになったタイプ(労働宿舎型)。3つ目は長い間不安定な職業を転々としてきたタイプ(不安定型)である。

第五章

 第5章では貧困の要因について記述してある。前述していた通り様々な要因によって生まれる。ちょっとした出来事で簡単に貧困に陥ってしまう「不利な人々」は経済社会の変化や格差社会の変化によって貧困から抜け出せなくなっていると岩田氏は述べた。

 「不利な人々」についてどんな状況を抱えているのか。著者は低学歴であること。さらに、結婚と就業の経験。離婚、その後の人生の「不利」「有利」と関連する「状況」を作り出していく。と述べた。

第六章

6章では貧困の先に新たな問題へと発展することについて述べられている。

ある時期までは多くの人々が、貧困を背景として非行や犯罪が生まれてくると考えていたが、実際は少なく、自殺者の方が多いことに問題視する識者はそう多くいない。

こうした貧困と社会問題の関係が、今日の日本社会で言及されることはほとんどない。むしろ多くの社会問題は、貧困ではなく豊かさの結果として生じていることが強調されている。だから、実は貧困が依然として多くの社会問題と結びつき、そのことが逆に社会問題の解決を遅らしていると筆者は結論付けた。

第七章

 第7章では貧困者の原因をのべ、日本の現状や対策を述べている。

日本の問題点の一つは、社会保障の『保険主義』にある。日本は本当に保険が好きな国である。低所得者にとって保険料の支払いは大きな負担となるし、その割に給付はそれほど多くないわけだから、社会保険に入らなくなる人々も出てくる。日本はこうした保険を重要視するあまり、所得保障が極めて手薄である。税による最低生活保障の仕組みとしては生活保護制度があるが、これは働ける年齢層にはとても厳しく、事実上の高齢者や病気で働けない人しか利用できない制度となっている。

【感想】

 自分はこの「現代の貧困」を読んで、ますます、貧困の解決策方法が難しいと思った。なぜなら、著者の岩田さんが述べていた通り、貧困は様々な要因と複雑に絡んでいて、さらにそれが社会問題へと発展していく。だからこそ、具体的な策が出てこいであろう。さらに、この本読んで、本当にホームレスの方は学生に助けてもらうことはうれしいと思っているのかそれとも、大変喜んでいるのかという不安を少し覚えた。そこは、ボランティアを同じ感覚だと思う。

自分は少し貧困に興味があり、知識は少しだけあったが、ホームレスについては全くでした。岩田さんが現地でホームレスの調査をするうえで、「ホームレスは目に見えるため把握はしやすいが、実態を知ることは大変極めて難しい。」という言葉にとても感銘を受けた。やはり、ホームレスにしろ、貧困にしろ、発展途上国の発展に貢献するにしろ、現地に行って目で確認し、相手と交流するという過程こそが大事であり、その基盤づくりがあってこそではないかと確信へと変わった。


ホームレス農園:命を繋ぐ「農」を作る!若き女性起業家の挑戦

著者:小島希世子 出版社:河出書房新書(2014/10/24)

2019年9月分

 

神奈川県藤沢市の田園地帯の一角に著者の職場である農園がある。人を落ち着かせたり、自信を取り戻させたりといった畑の恩恵は誰にでも、ホームレスも同じように同じようにもたらされるという。畑は自分自身を見つめ直せる場であり、新たな気づきや発見をもたらす場、様々なことを学ばせてくれる場だ。

 

仕事がないから、仕方なくホームレスをしているという人や、働く意欲はあっても住所・電話がないから雇ってもらえず定職に就くことができないという人が多く存在する。このままでは、悪循環で、いつまでも解決の兆しは見えない。そこで、著者は脱ホームレスの方法を意識に留めるようになったのだ。この時の気付きが“ホームレスと「農」をつなげる”活動を生むきっかけとなった。「ホームレスの自立」と「農業界の人手不足」という今の日本が抱える問題を同時に解決できると考えたのである。ホームレスからファーマーへ、この道は簡単なものではない。しかし、就農がホームレスを支える可能性は、大いにあると感じた。ホームレス農園には、まだまだに得ない課題やマッチングの問題もあるが、それ以上にホームレスが持つ、働くことへの意欲やそこから生まれる笑顔がある。そしてなにより、ホームレスもみんなと同じ人間であるということだ。働きたいと思う人が実際にその機会が得られることに幸せを感じるのは間違いないと考える。

 


ルポ・西成 七十八日間ドヤ街生活

著者:國友公司 発行所:株式会社彩図社 平成30年10月23日発行

2019年10月分

 

この本は筆者が実際に西成のドヤ街で仕事をもらい、仕事をした実体験が書かれた本である。

 

【あらすじ】

 西成には暴力団とつながりのある会社が多くあることを筆者は西成で働く人から聞き、あえて住み込みで、とある建設会社の仕事に就いた。仕事をつくには、現金型か契約型が存在する。なにも技能がないものは現金型でしか働くことができない。それでも、一日の多くの方が西成で仕事を求めている。

彼が仕事の中で出会った様々な人とのかかわりあいの中で生まれたエピソードなどが掲載されている。

 

【感想】

私は西成に5回ほど行く機会があるが、それは西成を表面上でしか見れていないかもしれない。筆者のように西成で暮らす人々と同じ生活を体験することで、本当の西成を知れるのだと感じた

 

 


ホームレス・ワールドカップ 日本代表のあきらめない力

著者:蛭間芳樹 発行所:株式会社PHP研究所 2014年6月27日発行

 

2019年12月分

今や日本でも人気の高いスポーツサッカーのワールドカップは誰でも知っているだろうが、実はホームレスだけが参加することができるサッカーのワールドカップも存在する。世界各国のホームレスが国を代表して参加する。

この大会の目的は試合に勝つか負けるかではなく、このワールドカップを機に自分自身が自立できるかどうかである。つまり、ホームレスの方々の自立を目的にしたサッカーの世界大会、「ホームレス・ワールドカップ」。

日本代表は野武士ジャパンと呼ばれ、筆者はその監督をしている。

本書は、ホームレスの方々がサッカーというスポーツを通じて、失いかけていた希望を取りもどし、仲間を作り、人生のあきらめきれないゴールや自立を目指して、過去の自分自身と日本社会という大きな壁に立ち向かうホームレスの人たちの物語です。

 

普段のホームレスの方々とは異なる視線から見ることができます。

 


子どもに「ホームレス」をどう伝えるか            いじめ・襲撃をなくすために

著者:生田武志 北村年子 編集:ホームレス問題の授業づくり全国ネット 発行:一般社団法人ホームレス問題の授業づくりネット(2013年7月25日 初版発行)

2020年1月分

 

『どうしてあんなところに人が寝ているの?』子どもの疑問になんと答えるか。

 

大人から植えつけられた偏見によって起こる「ホームレス」襲撃。ホームレスという問題が誰にでも起こり得るものであり、他人事ではないと考えられなければ、この問題の被害者にも加害者にもなり得ると感じた。まずは、正しく理解することから始めなければならない。

 

みなさんが持つ、路上生活者に対するイメージはどのようなものだろうか。

 

私が実際にお話してみて感じたことは、この方たちは安全に住める場がない、方たちなのだ、ということだ。しかし、一度お話しただけで、路上生活者になった経緯や、その方個人のすべてが理解できるわけない。私はホームレス班の活度を通じて、直接話をしても、わからないのに見た目や想像で他者を判断し、傷つけてはいけないと何度も考えさせられる。それは、どのような場面でもいえることだ。人は誰でも間違えると筆者は本書で述べている。路上生活者の方々のことを考えずに、批判することは自分自身を傷つけていることと同じだと感じた。

 

 

 


今日、ホームレスになった 15人のサラリーマン転落人生

著者:増田明利 出版:彩図社刊

(2008年8月20日 出版)

 

2020年2月分

「ホームレス」皆さんは我が身ではないと他人ごとのように思ってはいませんか?

ホームレスになった原因には、失業や倒産、病気や高齢で動けなくなったなどが挙げられる。

格差社会が深刻化する昨今の日本。明日は我が身に降りかかるかもしれない就職難、借金地獄、熟年離婚、家庭崩壊。ホームレスになりうる理由はたくさんある。その実態を本書では、15人の肉声により明らかにされている。

その15人の中には、大手総合商社、大手都市銀行、大手鉄鋼メーカーなど、一見、将来が安泰そうに見える方々が、何かの拍子にホームレスへと。本書で紹介されていた、他の人々も大企業に勤め、何らかの役職を得ていた。

みなそれぞれ、一流大学を卒業後、新卒で大手企業に就職し、何年も働いていた。しかし、バブル崩壊後、不況に陥り、不運な形でリストラや早期退職となり職を失う。そして、経歴があったとしても年齢が年齢なだけに、再就職先が見つけることができず、ホームレスに。

本書は主に、バブル時代における話であるが、現代にも同様に通じる。現代は、ますます時代の先読みができない時代である。たとえ、大企業に就職できたからといって、長年その企業に勤めることが正解とは分からない。大企業でも、早期退職者を多数募っている。果たして、彼らは安泰した生活を持続することができるだろう。

 

今の経済状況を適切に把握し、現在するべき選択は何か慎重に考えることが重要だろう。